BA時代のお客さんの思い出

今日はお休みだったので先日いただいた

朝日町のりんごと冷凍パイシートで

アップルパイを作りました。

アップルパイ

りんごを見ると思い出す方が、もう1人います。

私が新卒で入社した会社は

国産化粧品メーカーでした。

BA職だったので、色んなお客様と接する機会があり、

いい思い出もそうでない思い出も数えきれないほどたくさんあります。

その中で一番思い出に残っている方の

話をしたいと思います。

そのお客様は年配の女性で、当時60代後半から70代前半くらいだったと思います。

(以下Oさんとします。)

Oさんは同じ年代の方よりおしゃれに

気を配っていて、

つばのある帽子や大きめのイヤリング、

鮮やかな色合いのスカーフなどを身に付け、

いつもきれいにされていました。

購入してくれていた化粧品は、化粧水、乳液、クリームの3点で、シンプルケアがお好み、

価格帯はやや高め(6000円〜10000円位)の品を気に入って使ってくれていました。

メイク用品は私が勤めていたメーカーでは

使用していないようでした。

 

何度か接するうちにご自分の身の上話をしてくれるようになりました。

Oさんの元のご主人は地元では有名企業の家系の方で、歳の差がある結婚だったこと、

またOさんは後妻だったことなど。

そして結婚していた時は幸せだったのですが、

そのご主人が亡くなると、

Oさんにはお子さんがいなかったこともあり、

前妻のお子さん達(といっても大人です)から

亡くなられた元ご主人との婚姻関係を解消するよう

かなりしつこく言われてしまったそうです。

味方も少ない親族の中で

そのまま奥様の立場でいることは難しかったのでしょう、、、

結局言う通りにしたそうです。

それと引き換えにある程度のまとまったお金は頂いたそうで、

年金とそのお金を切り崩して1人でアパートで暮らしているとのことでした。

 

当時そのメーカーでは二ヶ月に1度は研修が実施され、

毎月のようにお客さんにおすすめしなければならない商品や販売方法が詳しく決められていました。

(今は違うかもしれません)

接客したほぼ全員に、社内キャンペーン中である美容液やクリーム、などの

案内をしなければなりませんでした。

会社からは、

自分のお財布の中身をとお客さんのお財布の中身を一緒だと思わないこと。

(自分が買えないからと言ってお客さんも買えないわけではない)

買いに来た化粧品だけを渡すのであれば自動販売機と同じ、

必ず声掛けしキャンペーンの商品を紹介

しましょう!などと常々言われており、

毎日毎日何名に声を掛けたか、何個販売した等、終業後に報告しなければ

なりませんでした。

ブラック企業では全くないのですが、当時はモラハラパワハラなんて言葉は

ありませんでしたから。)

 

でも私はOさんがそういう事情のもとに大切に使っているお金を持って

自分のいる店舗に化粧品を買いに来ていることを知ってしまったため、

気に入って使用しているその3点の化粧品以外のものは

一切おすすめできませんでした。

また他にも色々事情を抱えて買い物をしている人もいるかも知れない、

会社から言われた通りにしていていいのだろうかと

疑問を抱くようになってしまいました。

そう思ってしまってからは、キャンペーンの成績はあまりよくなかったと思います。

でも、その方が私らしくて良かったかなと今でも思っています。

 

その後Oさんはしばらくして、ご自身の老後のことを考え不安になったようで、

身内がいる地元の青森県五所川原市に引っ越していかれました。

新幹線のホームまでお見送りに行ったのが最後です。

五所川原に引っ越してからも時々電話やハガキなどで交流を続けていたのですが、

ある時から、電話をかけても「お客様がお掛けになった電話番号は現在使われて

おりません」というアナウンスに変わり、出したハガキも戻ってきてしまい、

音信不通となってしまいました。

まだ連絡が取れていた頃、私が妊娠したことをとても喜んでくださり

段ボール1箱分のりんごを送ってくれました。

この辺はりんご以外は何もないから、りんごしか送れなくてごめんなさいね、と。

それから、

赤ちゃんが生まれたらおもちゃでも買ってあげてね、とお金も同封してありました。

りんごをみるとOさんのことを思い出し、せつなくなります。